2014年09月17日

『パールへの道』6:岡本くん

岡本くんは、小学校3年生の時に同級生だった友人です。以来40数年、変わらぬ交流が続き、今でも誕生日にはプレゼント交換をしたりしています。
しかし、最初のかかわりはいささかマンガチックに乱暴でした。

同じクラスになったのは、ぼくが岡山から実家のある広島へ転校した日。夏休み明けの9月1日でした。ただ、初日は特に話などしなかったと思います。
ハッキリ覚えているのは、休憩時間にぼくが落書きをしていると、岡本くんがツカツカと近寄ってきてその紙を取り上げたこと。そして、そのまま丸めてクズかごに捨ててしまったのです。

ぼくは何だかあっけにとられて、怒るきっかけを逸してしまいました。かいていたのはタイガーマスクだったと思います。まわりでクラスメイトが「うまいねぇ〜」と言ってくれていました。
まぁ、嫉妬ですよね、あからさまな。それまでクラスで一番絵がうまいのは岡本くんだったので、いきなりライバル登場だったわけです。

実際、逆に彼がかいたものを「うまいなぁ」と思うこともよくありました。そうして、段々仲良くなっていったのです。マンガでよくある、殴り合ってわかりあうアレですね。
お互いの家でよく絵をかいて遊びました。その他、野球盤やボードゲーム、トランプなどなど。二人とも運動神経は悪くありませんでしたが、遊ぶのはもっぱらインドアでした。


そんな中で起きた、ちょっと変わった出来事を覚えています。
岡本くんの家に泊めてもらった時のこと。その日はふとんの上でトランプの『戦争』をしていました。
そのうちに、どうもAが一枚足りない感じがしてきたのです。実際、持ち札を見せあってみるとスペードのAが無くなっていました。

この何かが「ない」ことに気づくというのは、知的な体験です。シャーロック・ホームズの『銀星号事件』では、犬が吠えないことが推理の糸口になりました。
また、アリバイは不在証明と訳されますが、厳密には不在自体が立証されるわけではありません。別の場所に「いた」ことが、犯行現場に「いなかった」裏づけとされるだけ。何かの存在は証明できても、何かの不在は証明できないからです。

さて、無くなったスペードのAはふとんの下から出てきましたが、その際考えていなかったことが起きました。一緒にハートの7が出てきたのです。
Aは重要なので不在に気づかれましたが、7の不在は意識の外でした。何とも言えない不平等さが感じられて、ハートの7に悪い気がしたものです。そう感じたのは岡本くんも同じでした。そのあたりの感覚を共有できたところが、彼との友情が長く続いた要因かも知れません。


カードゲーム制作の原体験も、岡本くんと共にありました。
当時はまだ専用カードというイメージはなく、トランプを使った新しいゲームへのチャレンジでした。中学生の時だったと思います。
その他、野球盤やボードゲームも自分たちで作ってみました。特に野球盤は、長い棒の先に磁石をつけて、カーブやシュートを投げられるように工夫した「ちょっとした」ものでした。

いずれにせよ、それらのゲームは二人でなければできません。絵は一人でもかけますが、対戦ゲームには必ず相手が必用です。岡本くんと遊んでいなければ、おそらく「ゲームを作ってみよう」という発想にはいたらなかったと思います。

では、なぜ自分たちでゲームを作ってみたかったのでしょう?
これには、やはり先のメタ感覚が関係していると思います。
ルールというのは禁止事項です。「これをやってはいけない」という積み重ねがゲームの枠組を決定します。だから、窮屈なんですよね、ルールの多いものは。遊びだけでなく、組織や活動にも当てはまると思います。

ところで、野球で打者がボールを打った時、なぜ3塁に走ってはいけないのでしょう?
もちろん普通のルールであれば、それは禁止されていますし、意味がありません。が、それをルールにしてしまえば、新しい遊びが生まれます。一旦3塁側にまわったら、その回は時計まわりをしなければならない、とか。野手がボールを取っても、1塁と3塁のどちらに投げて良いか迷うので、心理的に複雑なゲームになるはずです。

ラグビーは、サッカーをやっている時に、やむにやまれずボールを持って走り出した人がいたから生まれたと言います。
新しい何かを生み出すには、ルールという枠組の外に飛び出さなければなりません。


ぼくが作るゲームにルールが少ないのは、その方がたくさんの人に遊んでもらえるからです。が、気持ちの問題で言えば、禁止事項をたくさん言いたくないんですね。「あれはダメ、これもダメ」という具合に。
ルールの少なさで言えば、囲碁が理想だったりもします。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
さて、次回は「いとことトランプ」です。


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posted by Kazuki at 11:46| 『パールへの道』